シューマンの交響曲第3番「ライン」と、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。第69回定期演奏会では、19世紀の欧州で生まれた2つの名曲を、じっくりとお楽しみいただきます。この2人の作曲家は、どちらも苦難の生涯を送りました。シューマンは心の病に、ベートーヴェンは音楽家にとっては致命的な難聴に苦しめられたのです。そして、どちらの曲も、それぞれの不調が発現した後に作曲されました。にもかかわらず、これらの曲は大いなる喜びに満ちて終わります。それはいったい、どういうことを意味するのでしょうか。
音楽は、あるときには恋心の切なさをかき立て、あるときには子どもを眠りにいざない、あるときには群衆の気持ちを高揚させ、あるときには人の心を他では得られない喜びで満たします。それらは、音楽が人間の魂に直接訴えかける力を持っているからこそ可能なのです。
コロナ禍のために世界の多くの人々が苦しんでいる現在、音楽に何ができるのか。そのひとつの答えがここにあります。音楽には、魂を救う力があります。シューマンもベートーヴェンも、自ら作曲した音楽に救われたに違いないのです。さらにこれらの曲は、世の多くの人々をも救う力にもなるのではないでしょうか。
一つお詫びを申し上げなければならないのは、昨年6月に予定されていた第68回定期演奏会の開催が、コロナ禍のために見合わせになったことです。皆様にこのたびの演奏を聞いていただくのは、私どもにとって、このうえなく大きな喜びです。どうかその喜びが伝わり、皆様の心にも灯りがともりますように! 私たちと一緒に、少しでも充実した時間を過ごしていただければ幸いです。
ザ・シンフォニカ代表 小川敦生